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エキスポ 再演

「エキスポ」
宮崎市民プラザ オルブライトホール
3月21日 夜

 

中島淳彦 作・演出

 

再演は難しい。
特に、初演が大成功で、作り手にも観客にもその印象がまだ強く残る中、一部キャストスタッフが入れ替わっての再演となると、 なおさらである。


日南出身の劇作家、中島淳彦作演出の「エキスポ」。
昭和45年の日南油津が舞台。ちょうど大阪万博が開かれている時。
大場家を一人で切り盛りしてきた働き者の母親を亡くした、その家族の通夜と葬式の模様を描く。

初演と同じく、宮崎の脂ののった旬の役者たちの熱演で、 笑いに満ちたレベルの高い舞台に仕上がった。
前回はゲスト出演の井之上隆志(都城出身・東京で役者として活躍)に引っ張られるような感じだったが、 今回はバランス良く溶け合った良いアンサンブルとなった。日南の劇団からの参加がないのが残念である。
そんな中で、特にSPC、220の役者陣が良い。こういうサイズの劇場(オルブライトホール)でやり慣れていることと、 笑いを積極的に取りに行くような演技が手に入っている。逆に、ややこのサイズに収まりが悪いのは25馬力陣であるが、 これは合同公演では仕方ないことかもしれない。

前回に比べると、全体的に細かい遊びによる笑いが多くなっているような気がする。 たしかに笑えるのだが、やや人物の輪郭が崩れるような気がする。その問題が何につながるかは、後に詳述する。

亡くなった母親の甥・賢作を演じる井之上は、 陽性で軽妙な演技が一頭地を抜いているのはいうまでもない。普段から宮崎弁で芝居をしているようである。
成合(SPC)の長男の嫁・君江がそれらしくて良い。芝居全体を牽引している。
あべゆう(こふく劇場)の次女・千代子が落ち着いた良いでき。前回よりもこういう生活感のある役が身につくようになってきた。
東京から来るレコード会社の社長・芳川を演じる蛯原(SPC)は、いつもながらの調子良さが生きている。欲を言えば、 都会人の嫌みと安っぽさがもう一息ほしかった。
谷口(阿坊)演じる宝田は、面白いがちょっと笑いを取りに行きすぎか。
甲斐(220)の上原は、柄は十分だが、もう少し漁師らしさがほしい。人の良さが出てしまう。
湯浅(220)の長男・康夫は、デクノボーらしく、働いている感じがしない。それがよいのか悪いのか。
次女の前夫山下を演じる中村(25馬力)は、歌がうまいところはよいが、東京へ出て行きたがる野心が出ていない。田舎の方が似合うようだ。
父親・了一を演じる山室(25馬力)は、ぼっけな爺さんぶりを期待したが、意外に硬骨。 前回この役を演じた矢野一誠氏の好演が印象に残るせいかもしれないが、逆に山室らしいとぼけた頼りない父親像を見たかった。しかし、 それでも亡き妻への愛情がにじみ出ている。
他に、緒方(220)、濱砂(こふく劇場)、檜山(SPC)、金子(220)ともに良い。
濱崎(二人の会)が酔いどれの香典泥棒婆さんを楽しんで演じている。舞台の世界に幅が出る。


さて、全体としてみると、喜劇としては面白かった。
しかしもう一つの「テーマ」が十分に伝わらず、ラストの父の叫びが心に響かない。
これは単に役者の演技力の問題ではない。
一つは演出の問題。
最期にイメージの中の亡き母の後ろ姿を出したり、スモークをむせるほど炊いたり、家族以外の役が出てきたりと、余計なものが多かった。
しかし、それは本質ではない。

「人類の進歩と調和」
万博のテーマであり、母の最期の言葉である。
この言葉は、昭和45年という、高度経済成長の絶頂期に発せられた言葉として、象徴的な意味を持つ。
近代と現代の転換点。
すっかり生活様式の変わってしまった今=2009年から振り返って、その転換が本当に進歩と調和だったのか、 それが正しかったのか問い返しているわけだ。
それを感じさせるには、かろうじて前現代が残る昭和45年の油津を克明に描かなければ、現代を照らし出すことができないのだ。

ところが、残念ながらそれが明解でない。
これでは現代の田舎のホームドラマである。
台詞の端々にはその時代を表す言葉は散りばめられているのだが、舞台全体からあの時代の空気が流れてこない。
笑いを追求するほど、感覚が現代的になっていく。古き良きゆったりとした時間の流れが感じられなくなる。
美術衣装の詰めの甘さもある。

難しいところではある。
喜劇としては面白かったのだが、テーマ的には薄味となってしまった。

 

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