こふく劇場 『三十、かも』
劇団こふく劇場プロデュース公演#13
レコード・プレイヤー・シリーズvol.4
『三十、かも』
3月9日(日) 14:00~
小林市文化会館
「佳き日に」 (作・小水流美紀)
「団欒」 (作・島田佳代)
「とりあえず、さようなら」 (作・渡邉眞美)
30歳、女。
3人の新人劇作家が、それぞれ30分の短編を書き上げてのオムニバス。
女性でなければ描けない言葉の数々がおもしろい。
内容の核心に触れる部分がありますので、これから門川公演をご覧になる方は読まないことをお薦めします。
「佳き日に」は、友人の結婚式直前に、スピーチを考える3人の女性が主人公。
思い出と、恋と、結婚と。
リアリティのある会話と、スピード感が小気味よい。3編の中で、最も30女性の会話を正面からストレートに描いている。
役者3人(ゆの、神水流じん子、仮屋美千子)が楽しそう。
一転して「団欒」は、張りつめた空気になる。
「ピアノ狩り」が行われている、異常な状況下。
母の遺品のピアノを守って一人暮らす女・イチコは、母の亡くなった歳と同じ30歳の誕生日を迎える。
誕生祝いに訪れる父と妹。
「ピアノを守らなければ」という女に、父は「自由に旅立ちなさい」と勧める。
が、「代わりに自分と妹がピアノを守る」というこの気持ちが、女を追いつめてしまう。ピアノ=母の面影に囚われた女は、ピアノを捨てるしか自由になる方法はない。しかしこの異常な状況では、それは死を意味するものだった。
歌うことさえはばかられる、沈痛な空気。詩的な台詞が、鬱々とした夕暮れの光を感じさせる。
父の高永一誠、妹の上田政子が好演。あべゆうのイチコは、追いつめられた風情がほしい。柄にない役か。
「とりあえず、さようなら」は、同窓会の流れで集まった3人の話。
ひょんなことで亡くなった男の幽霊と、性転換した現女性と、女性の会話。
変わってしまったもの、変わりきれないもの、変わらないもの、変えられないもの。
3人(松浦泉、濱砂崇浩、上元千春)のそれぞれの個性が生きて良い。
上元の歌をもう少し聴きたかった。
山室曹俉が、高齢のゲイを真摯に演じている。
以上。
おもしろかった。
が、欲を言えば、もう少し別の角度がほしかった。
「30」という数字にとらわれて、「30を超えること」にこだわりすぎたように思う。
多くの30代女性は、結婚、子育て、と、生活スタイルが激変し、キャリアを中断、あるいは放棄せざるを得ない状況になる。
男は「自分も子育てをしているぞ。自分の時間なんか無いんだ」と言っても、「仕事」という場で何らかの評価を受け、「仕事だから」という言葉が家庭からの逃げ口上にも使えるのだ。
多くの女性は、子育ても家事も、当然だと見られて誰も褒めてもくれない。
その孤独感。
あるいは、結婚も出産もしなければ、それはそれで「まだ?」と別の責めが待っている。
そういう30代女性の境遇を描く作品が、一本あっても良かったのではないかと思う。
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