ぐるーぷ連 第40回公演 『埋もれ木』
ぐるーぷ連 第40回公演 『埋もれ木』
2007年10月19日 19時30分
ぐるーぷ連劇工房
■構成・演出
実広健士
■出演
井上貴子・児玉美恵・前本俊一
ぐるーぷ連を観ることは、私の年中行事のようなものである。
特にストーリーがあるわけでなく、以前の舞台と同じ言葉、同様の舞踏様式。
何かが大きく変わるわけではない。
だがそれが良いのではないかと、最近は思うようになった。
舞台にいるのは、何某かの役ではなく、人間井上貴子、あるいは児玉美恵や前本俊一そのものである。
彼女らが歳を重ね、その時々の思いを舞台に乗せる。それを観る私自身も歳をとり、見方も変わっていく。
いわば自分自身を定点観測しているような感じなのである。
今回は、彼らが最も慕っていた劇作家・太田省吾の追悼公演である。
いつもはわりとユーモアのあるパンフレットの文章を楽しみにしているのだが、今回は太田省吾の語録を並べているだけで、連の言葉はない。
第40回公演、あるいは35周年という節目でありながら、それにまったく触ていないのが、太田省吾を失ったことの大きさを物語っているように思える。
3人の白髪の老人が現れる。
井上の静謐な立ち姿が良いのは言うまでもないが、児玉、前本の両人の姿も良くなってきた。井上に遜色がない。
もう今までのような、井上の一人舞台を観るような感じではなくなった。
私もかつてこの劇団の研究生にいたのだが、その同期の児玉が、これだけの力を持つことからも、彼女や自分の中に流れた時間を感じずにはいられない。
女は羽衣を着て生まれ、男に奪われ、最後に羽衣を見つけて、月に還る、という、いわば「女の一生」もしくは、天狗の簑を着て飛んだり落ちたりする「男の一生」
・・・そんな感じのテーマで、全体を貫かれてはいる。
しかし、今回はあまりそういうテーマによる緊張感はなかった。
むしろ、前本が泣きそうな顔で身もだえしながらうごめく姿に、感動した。なるほど、演劇とは素ではとても吐き出せないような感情をえぐり出すことなのだなと、深く心に刺さった。
最後、後の戸が開き、外の林が見える。その中を羽衣が飛んでいく。
そして暗転。
美しく女の一生を終えたかに見え、拍手が起きかける、その時、IRAだったような老女の声。
「飛べないねえ。飛べないのかねえ。」
今までの連では考えられないような、自虐的な幕切れが、軽みを感じて良かった。
ところで、今回はぐるーぷ連が綾町に新しい劇場を開設して3回目の公演になるが、前々回の評を書きそびれたし、前回は観ることができなかった。
その書き損ねたことの大事な点を記しておく。
連は宮崎市内の住宅街に稽古場兼劇場を持って活動してきた。太田省吾や大野一雄の影響を強く受けていることからも、系譜としては都会のアンダーグランド的な性格を持っているのだと思う。
綾町の新劇場は、山の中の静かな森の中にある。夜となると、あたりは一面の闇である。
そうなると、テント劇のように、劇に屋外の風景を取り込みたくなるのは自然なことで、舞台奥の戸を開けると、外の林が見える設計がしてある。
当然、初回の公演でもその手を使った。
狭い劇場の人いきれの中に、舞台奥から冷たく新鮮な空気が流れ込んでくる。
アッと息をのむ瞬間であった。
が、劇中にもう一回とが開いた時に、私は違和感を覚えた。
外は闇。今までも連は闇の似合う劇団ではあった。
しかし、「闇」の意味が違ってしまったのではないか。
街中の劇場では、外の向きの窓を開ける演出をしようとも、「闇」はリアルな明るさのことでなく、心の中の、あるいは社会の「闇」であった。
しかし、森の闇は、明るさの「闇」であり、実は生命に溢れる世界である。あまりに生々しく、そして優しいのだ。
かくて、連は人間の深淵に迫る力を削がれてしまったのではないかと思うのである。
初回の公演は、街中で演出したものを、ギリギリに完成した劇場にはめ込んだだけのものだから、仕方なかったかもしれない。
しかし、今回は3回目で、何らかの答えを出せたのではないかと期待したが、どうもこれは難しい課題のようで、むしろ深刻になったとさえ思った。
前述の通り、幕切れに羽衣が外の森に飛んでいくのだが、ほんものの白布がほんものの森に飛んでいく様を見せるより(いかに照明で飾ろうとも)、井上の目線一つで観客の心の闇夜に衣を飛ばした方が、力があったのではなかったか。
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